Cassandraは、NoSQLデータベースの代表的な技術であり、金融分析などの高可用性・高スケーラビリティを求める分野で広く利用されています。本記事では、Cassandraの運用における4つの主要な課題とその解決策を解説し、Apache Foundationが提供するオープンソース技術の実踐的な活用法を明らかにします。
主要な課題と解決策
問題1:TTLとCompaction戦略の衝突によるディスク空間の暴走
警訊指標:高ディスク使用率、SS Table數の異常増加、droppable tombstone比率の100%超過
根本原因:TTLによるデータの過期と、Time Window Compaction Strategyのデータ過期時間の不一致がSS Tableの合併を妨げ、ディスク空間を浪費する
解決策:
unchecked_tombstone_compaction
を有効化し、非重疊Tombstoneの強制削除を実施
allow_unsafe_aggressive_ss_table_expiration
を設定し、Append-Onlyデータの安全な削除を可能に
- データモデルを最適化し、異なるTTLを持つデータを別Tableに分離
- Levelled Compaction Strategyへの移行や、Cassandra 5.0のUnified Compaction Strategyの導入を検討
問題2:クロスデータセンターの同期書き込みタイムアウトとJVMスレッドの枯渇
警訊指標:特定データセンターのノードタイムアウト、Native ThreadのOutOfMemoryエラー
根本原因:JVMのデフォルト設定では、Native Thread空間の枯渇時にノードを自動的に停止しない
- Gossipプロトコルによる無効ノードへのPing送信が他のノードの狀態誤判定を引き起こす
- Mutateメッセージが新スレッドの生成を阻害し、協調ノードのタイムアウトを引き起こす
解決策:
- JVM Agent(例:JvmQuake)を活用し、OutOfMemory狀態を自動的に終了
task_max
パラメータを正しく設定し、systemd起動時のスレッド制限を迴避
- enpr設定の誤りを修正し、システムリソース制限を確認
問題3:認証エラーとキャッシュの失効によるクエリタイムアウト
警訊指標:偶発的な認証エラー、高負荷時のクエリタイムアウト
根本原因:ノードのローカルキャッシュ(Authorization Policies、Roles、Credentials)が期限切れ後、System Tablesへのクエリを必要とし、過負荷時にクエリが併發する
- 過期した認証エラーが
UnauthorizedException
として扱われ、アプリケーション側のリトライができない
解決策:
- アプリケーション層で特定のエラー(例:
AuthFailure
)に対するリトライ戦略を導入
roles_validity
、permissions_validity
、credentials_validity
のキャッシュ時間を延長
- 異步キャッシュリフレッシュ(
async_refresh
)を有効化し、同期クエリの負荷を軽減
- Cassandra 4.1へのアップグレードにより、同期キャッシュリフレッシュを実現
問題4:データ移行後のデータ體積異常とCompaction戦略の影響
警訊指標:移行後のデータ體積が元クラスタの50%にとどまる
根本原因:元クラスタのSize-Tiered Compaction Strategyによる多重挿入がSS Tableを分散し、移行後の単一挿入によりデータが合併される
- 原クラスタの圧縮率が高かったが、データ分散によりストレージ効率が低下
解決策:
- Levelled Compaction Strategyへの移行により、データの重複を削減
- 挿入ロジックを最適化し、複數回の挿入を最小限に抑える
nodetool compact
を実行し、移行後のCompactionを手動でトリガー
技術的まとめ
- Compaction戦略の選択:データ特性に応じてTime Window / Levelled / Unified戦略を適切に選択
- TTL管理:TTLの範囲を過大に設定しないことでCompaction戦略の効果を維持
- JVMチューニング:Native Threadの枯渇やスレッド制限を迴避するための設定調整
- 認証メカニズムの最適化:キャッシュ設定とエラー処理の改善により、クエリタイムアウトを防ぐ
- データ移行の最適化:データの一貫性とCompaction戦略の整合性を確保し、體積異常を迴避
データ移行と體積異常の分析
問題現象:あるアプリケーションが新クラスタにデータを移行した後、データ量が元クラスタの50%にとどまった。データの喪失を疑ったが、実際にはSS Tablesの合併が原因だった。
核心分析:
- データ分佈特性:元クラスタでは同一Partition Keyのデータが複數のSS Tablesに分散され、列レベルのタイムスタンプが複數存在した
- データ構造の違い:元クラスタは列レベルのタイムスタンプによりデータ冗長性が生じたが、新クラスタでは行レベルのタイムスタンプによりストレージ効率が向上
- SS Tablesの分析:
nodetool getsstables
でデータ分佈を確認し、sstabledump
で具體的なPartition Keyデータを解析
解決策:
- Compaction戦略の調整:Size-TieredからLevelled Compaction Strategy(LCSS)への移行により、データの重複を削減
- 挿入モードの最適化:複數回の挿入を最小限に抑え、最後の操作で多カラムを一括挿入
- 監視ツールの活用:
nodetool
、sstabledump
、nodetool metastats
、nodetool tpstats
などのツールを用いた監視
重要な教訓:
- 観測性(Observability):クエリトレースを有効化し、早期に複數挿入問題を検出
- 設定の最適化:デフォルト設定に依存せず、用例に応じたCompaction戦略の調整
- アクティブな監視:Tombstone比率、Compaction進捗、ディスク使用率などの指標を監視し、潛在的な問題を早期に発見
技術的影響:
- データ量差異:列レベルvs行レベルのタイムスタンプにより約50%の差異
- パフォーマンス最適化:LCSS戦略により読み取り遅延が大幅に改善
- コスト削減:ストレージコストの削減とクラスタ効率の向上