KVMインスタンスのインポートとQCOW2ファイル処理技術解説

導入と背景

KVM(Kernel-based Virtual Machine)は、Linuxベースの仮想化技術として広く採用されており、CloudStackなどのクラウドプラットフォームにおいて重要な役割を果たしています。QCOW2(QEMU Copy-on-Write Version 2)は、KVM環境で使用される効率的なディスクイメージ形式であり、インスタンスの移行や共有に適しています。本記事では、KVMインスタンスの外部ホストからのインポート、QCOW2ファイルによるインスタンス作成、VMwareからの移行プロセスについて詳細に解説します。

KVMインスタンスの外部ホストからのインポート

技術概要

KVMインスタンスを外部ホストからインポートするには、以下のような手順と條件が求められます。

APIフロー

  1. listVMSForImport APIを使用して、遠隔KVMホストのlibvirt(デフォルトポート16509)に接続し、停止狀態のインスタンスをフィルタリングします。
  2. 選択したインスタンスに対して、以下の処理を実行します:
    • 遠隔ホストの原始ボリューム(qcow2/rawなど)をローカルのqcow2イメージに変換
    • SCPプロトコルを介して変換後のqcow2ファイルをCloudStackのプライマリストレージプールにコピー
    • importVM APIを使用してqcow2ファイルからインスタンスを作成

必要條件

  • 遠隔KVMホストにlibvirtがインストールされていること
  • ポート16509がSSH接続可能であること
  • インスタンスが停止狀態であること
  • SSHアカウントとパスワードが設定されていること

操作手順

  1. CloudStack UIの「ツール」>「インポート/エクスポートインスタンス」からKVMをソースプラットフォームとして選択
  2. 遠隔KVMホストのIPアドレス、アカウント情報、一時変換パス(デフォルト/tmp)を入力
  3. ターゲットインスタンスを選択し、自動的に変換とコピー処理を実行
  4. インスタンス作成時に表示名、ネットワーク設定、計算リソース配分を指定

QCOW2ファイルによるインスタンス作成

技術概要

QCOW2ファイルを直接インポートするには、以下の條件を満たす必要があります。

ストレージ要件

  • プライマリストレージプールのルートディレクトリに配置すること(サブディレクトリは非対応)
  • ファイル形式がqcow2であること(raw形式は非対応)
  • 獨立したイメージであること(バックイングファイルは非対応)
  • 暗號化されたイメージや他のインスタンスで使用中のイメージは非対応

操作フロー

  1. QCOW2ファイルをプライマリストレージプールのルートディレクトリにアップロード
  2. CloudStack UIの「ツール」>「インポート/エクスポートインスタンス」から「ローカル共有ストレージ」を選択
  3. QCOW2ファイルのパス(例:centos7.qcow2)を指定
  4. インスタンスパラメータ(表示名、ネットワーク、計算リソースなど)を設定
  5. importVM APIを使用してインスタンスを作成

注意事項

  • システムはデフォルトでCentOS 7.3 64ビットをOSタイプとして設定
  • 実際のOSタイプに合わせて手動で変更が必要
  • 作成後、手動でインスタンスを起動し、ボリュームマウントパスを確認

VMwareからのインスタンス移行

技術概要

VMwareからKVMへの移行には、virt-v2vツールを使用します。このツールは、ストレージドライバの変更、initramfsの更新、Windowsレジストリの調整などもサポートします。

操作フロー

  1. CloudStack UIの「ツール」>「インポート/エクスポートインスタンス」からVMwareをソースプラットフォームとして選択
  2. VMware vCenterの接続情報を入力(內蔵または外部vCenterをサポート)
  3. ターゲットインスタンスを選択(停止狀態であること)
  4. 転換パラメータを設定:
    • ターゲットKVMホストの選択(クラスタ間での選択をサポート)
    • 一時ストレージパスの指定
    • OSタイプの選択
  5. 転換プロセスを開始:
    • 一時qcow2ファイルの作成
    • NBDプロトコルを介して仮想マシンイメージをターゲットストレージに転送
    • 最終的なqcow2ファイルの生成

制限と提案

  • Windows 11はTPMサポートが必要(CloudStackでは未対応)
  • CentOS 9またはUbuntu 22.04+を転換ホストとして推奨
  • Windows 11の移行は非対応
  • 転換プロセスはマシンサイズに応じて時間がかかる

バージョンアップデートと改善

4.19.0バージョンの特徴

  • QCOW2ファイルから直接インスタンス作成をサポート
  • virt-v2vツールによる改善された仮想マシン転換プロセス
  • 一部のシナリオでは性能が10倍向上

今後の改善方向

  • データボリュームのインポートをサポート
  • Windowsシステム転換プロセスの最適化
  • TPMデバイスのサポート強化

技術の利點と課題

利點

  • 多様なソース(KVM、QCOW2、VMware)からのインスタンスインポートをサポート
  • プライマリストレージプールとの統合により、管理が容易
  • パフォーマンス向上により、大規模なインスタンス移行が可能

課題

  • Windows 11などの特定OSのサポートが限られている
  • 大容量のQCOW2ファイルの処理には時間がかかる
  • ネットワーク設定やMACアドレス衝突の管理が必要

結論

KVMインスタンスのインポートとQCOW2ファイル処理は、クラウド環境での柔軟な仮想マシン管理に不可欠です。本記事で紹介した手順と注意點を踏まえ、適切な設定と運用により、効率的なインスタンス移行と管理が可能になります。実際の導入では、ネットワーク設定やストレージ構成の確認、OSタイプの正確な指定が重要です。今後のバージョンアップで期待される改善點も活用し、クラウド環境の運用をさらに最適化してください。