データエンジニアリングにおいて、データの変換と分析は不可欠なプロセスです。従來のSQLは強力ですが、語法の不一致や組み合わせ性の欠如、データベースごとの方言の違いといった課題がありました。PRQL(Pipeline Relational Query Language)は、これらの問題を解決し、現代のデータ変換に適した新たな言語として注目を集めています。本記事では、PRQLの設計理念、特徴、実用例を解説し、その技術的価値を明らかにします。
PRQLは、SQLの関係モデルを基盤としつつ、Pandasの直感的な操作性を融合した現代的なデータ変換言語です。2023年1月にHacker Newsで提案され、現在ではDuckDBとClickHouseのネイティブサポートを実現しています。PRQLは、パイプライン形式の構文(|
や⏎
)を採用し、データの流れを明確にし、複數の変換ステップを組み合わせる柔軟性を提供します。
from
から始まり、filter
、group by
、aggregate
などのステップをパイプライン形式で記述します。例えば:from customers
filter age > 30
group by region
aggregate count
??
演算子でNULL値を代替することができ、データの整合性を保ちます。PRQLは、SELECT
、FILTER
、GROUP BY
、AGGREGATE
、WINDOW
などの操作を獨立して設計し、それぞれが明確な役割を持ちます。これにより、複雑なクエリもモジュール化され、読みやすく修正が容易になります。
def take_smallest(n, table)
sort by size
limit n
これにより、高度なデータ処理ロジックを柔軟に構築できます。PRQLは、編集時に型を推論し、早期のエラーを検出します。JavaScript Playgroundなどのツールを活用することで、即時実行可能なSQLを生成し、小規模データセットでのテストが可能です。
from invoices
derive { fee: 10, income: total - fee }
filter (today() - invoice_date) < 365
group by customer_id
aggregate { total_income: sum(income) }
filter total_income > 1000
sort by total_income descending
join left customers on invoice.customer_id = customer.id
derive { name: first_name || last_name ?? 'Unknown' }
この例では、join
で顧客テーブルと結合し、??
で空値を処理しています。derive
で新規カラムを生成し、take
で結果を制限しています。
from stock_data
derive { total_return: (return + 1).cum_sum() - 1 }
累積リターンを計算するためのcum_sum()
関數を使用しています。また、目標データベースの方言(例:MSSQL)を指定可能です。
from data
loop {
join next_day on date = next_day.date
derive { ewma: alpha * value + (1 - alpha) * previous_ewma }
}
loop
構文で再帰的な計算を行い、alpha
パラメータを指定してEWMAを計算します。結果はSQLの再帰CTEに変換されます。
PRQLは、SQLの限界を克服し、現代のデータ変換ニーズに応える新たな言語として注目されています。パイプライン形式の構文と正交な操作により、複雑なクエリも明確に記述可能で、開発効率を向上させます。特に、金融データエンジニアリングや分析において、PRQLはその柔軟性と直感的な設計で大きな価値を提供します。今後の進化に期待が寄せられる技術です。