WebAssemblyとLinkerdの統合:サービスメッシュの新たな可能性

はじめに

WebAssembly(Wasm)は、近年急速に注目を浴びる技術として、多様な環境で実行可能なミクログリッドな実行環境を提供しています。一方、Linkerdはサービスメッシュの代表的な実裝であり、トラフィック管理やサービスの信頼性を確保するための機能を備えています。この2つの技術の統合は、サービスメッシュの境界を越えた柔軟なアーキテクチャ設計を可能にし、新たな可能性を開きます。本記事では、WebAssemblyとLinkerdの統合の現狀、課題、および今後の展望について解説します。

WebAssemblyの基本と特徴

定義と概念

WebAssemblyは、コンパクトなバイナリ形式で実行可能なミクログリッドな実行環境です。Rust、Go、Cなど多様な言語からコンパイル可能な.wasmファイルを生成し、サーバー、エッジ、ブラウザなど幅広い環境で動作します。この技術は、コンテナと併用することで、柔軟なデプロイメントを実現します。

主な特徴

  • セキュリティモデル:能力ベースの権限制御により、必要な権限のみを付與します。これはコンテナの権限モデルとは逆のアプローチです。
  • ゼロコールドスタート:起動時間はマイクロ秒単位で、アイドル時のリソース使用量はほぼゼロです。
  • 移植性:一度コンパイルすれば、x86、ARMなど多様なアーキテクチャで実行可能です。
  • サイズの小ささ:通常は數百KBから數MB(インタプリタを含む場合、數十MB)と非常にコンパクトです。

WebAssemblyコンポーネントとWITインターフェース

WebAssemblyコンポーネント

WebAssemblyコンポーネントは、異なる言語のモジュールをWIT(WebAssembly Interface Types)でインターフェースを定義し、組み合わせる仕組みです。これは、ProtobufのIDLに類似した役割を果たします。

組み合わせの仕組み

明確な入出力定義により、RustやGoなどのモジュールが協働可能になります。例えば、CライブラリをWebAssemblyに変換し、PythonやJavaScriptから利用可能な形にします。

アプリケーションシナリオ

言語間のFFI(Foreign Function Interface)の欠如を補うことで、多様な言語間での相互運用性を実現します。

WMCloud:WebAssemblyの編排プラットフォーム

定義と位置づけ

WMCloudは、Kubernetesに類似したWebAssemblyモジュール専用の編排プラットフォームです。ローカルデータセンターからエッジ(IoT、ブラウザ)まで幅広くデプロイ可能です。

主な違い

  • 多租戶サポート:単一のIPアドレスで數千のモジュールを実行可能。
  • 軽量性と拡張性:エッジコンピューティングなど、多様なシナリオに適応。

LinkerdとWebAssemblyの統合

現狀と課題

LinkerdはWebAssemblyモジュールへのサポートが限られており、追加の設定が必要です。セキュリティポリシーの統合や可観測性の確保が課題です。

課題の詳細

  • セキュリティポリシー:Spiffe/Spireなどのツールを用いて、WebAssemblyワークロードをポリシー制御下に組み込む必要があります。
  • 可観測性:単一のメインプロセス內の複數モジュールを區別し、リクエストのトレースを追跡する必要があります。

機會

  • 拡張ポイントの活用:Linkerdの既存機能(トラフィック制御、熔斷など)を最大限に活用。
  • LinkerdのWebAssembly化:LinkerdをWebAssemblyモジュールにコンパイルし、アプリケーションモジュールと協調してルーティングやポリシー処理を行う。

プラットフォームハーキスパターン

概念

プラットフォームチームが維持する「プラットフォームハーキス」モジュールは、すべての外部通信(HTTPなど)を処理し、アプリケーションモジュールは単一のエクスポーターのみを定義する仕組みです。

アプリケーションシナリオ

  • 可観測性:リクエストの追跡。
  • ポリシーベースの認証:アクセス制御。
  • ルーティング、リトライ、熔斷:サービスメッシュ機能。

今後の方向性

LinkerdをWebAssemblyモジュールにコンパイルし、プラットフォームハーキスのコアコンポーネントとして統合し、アプリケーションモジュールと協調して動作させることを目指します。

技術統合の提案

セキュリティの統合

Spiffe/Spireなどのツールを活用し、WebAssemblyワークロードをLinkerdのポリシー制御下に組み込みます。

可観測性の実裝

異なるWebAssemblyモジュールのリクエストを區別し、細かい監視メカニズムを構築します。

Linkerdの拡張

Linkerdの拡張ポイントを活用し、WebAssemblyモジュールのカスタム機能(例:特定の関數の実行)をサポートします。

まとめ

WebAssemblyとLinkerdの統合は、サービスメッシュの境界を越えた柔軟なアーキテクチャ設計を可能にします。セキュリティと可観測性の課題を解決し、Linkerdの拡張ポイントを活用することで、より強力なサービスメッシュを実現できます。今後の実裝では、WebAssemblyモジュールとしてのLinkerdのコンパイルと、アプリケーションとの協調動作が鍵となります。