TerraformからOpenTofuへの移行:大規模クラウド自動化の実踐

はじめに

Terraformはクラウドインフラのインフラコード化(Infrastructure as Code: IaC)において広く採用されてきたツールですが、近年ではオープンソースコミュニティの発展に伴い、OpenTofuという代替ツールが注目されています。本記事では、米國金融サービス企業であるFidelity InvestmentsがTerraformからOpenTofuへの移行を実施した経験をもとに、大規模なクラウド自動化におけるツール選定と移行戦略について解説します。本記事の目的は、TerraformとOpenTofuの違いを理解し、実際の移行プロセスを學ぶことです。

主な內容

TerraformとOpenTofuの定義と特徴

TerraformはHashiCorpが開発したインフラコード化ツールで、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプロバイダーをサポートしています。一方、OpenTofuはTerraformのオープンソースバージョンであり、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)のプロジェクトとしてコミュニティの維持が行われています。OpenTofuはTerraformのコードベースを継承しつつ、オープンソースコミュニティの発展を促進する目的で設計されています。

クラウド自動化における重要な特性

  • 一貫性: OpenTofuは単一のCLIツールを提供し、Terraformの雙方向のバージョン管理を避けることができます。
  • 拡張性: OpenTofuはTerraformの機能を維持しつつ、コミュニティのフィードバックを反映して継続的に改善されています。
  • 信頼性: Fidelity Investmentsでは、OpenTofuの導入により、50,000以上のステートファイルと400萬以上のリソースを管理する大規模な環境での信頼性が確認されています。

実際の移行プロセス

Fidelity Investmentsでは、以下のステップを実施しました。

  1. 初期検証(Proof of Concept): 內部プラットフォームアプリケーションを試験的にOpenTofuで実裝し、CI/CDパイプラインやガバナンスメカニズムの整合性を確認しました。
  2. 社會的合意形成: DevOps委員會や高使用率のTerraformチームとの協議を通じて、OpenTofuの導入を推進しました。
  3. 能力構築(Enablement Phase): 遷移に必要なツールやドキュメンテーションを提供し、試験プロジェクトでの検証後、全チームに開放しました。
  4. 採用段階(Adoption Phase): 核心パートナーと協力し、70%のプロジェクトを多季度の選択期間內で移行しました。
  5. デフォルト切り替え: 全チームがOpenTofu CLIをデフォルトに設定し、Terraformの使用を段階的に廃止しました。

技術的課題と解決策

  • ツールの多様性: PowerShell、Pulumi、Terraform、OpenTofuなど、複數のツールが使用されていたため、統一管理が困難でした。
  • 解決策: 內部プラットフォーム「Bento」を構築し、共用リソースとパイプラインを統合しました。また、ブランド化(內部コードネームとしてのBento)により、OpenTofuの認知度を高めました。

3つの実踐的アドバイス

  1. CLIの置き換えを重點に: CI/CDパイプラインとCLIコマンドの変更に注力し、Terraformコード自體の変更は最小限に抑えました。
  2. CLIバージョンの一貫性: 移行前から組織內でのCLIバージョンを統一することで、変異やリスクを減らしました。
  3. データの透明性: 遷移進捗を追跡し、成功事例をデータで示すことで、チームの信頼と參加を促進しました。

結論

TerraformからOpenTofuへの移行は、大規模なクラウド自動化環境において重要な戦略です。Fidelity Investmentsの経験から、CLIツールの統一、バージョンの一貫性、データの透明性が移行成功の鍵となります。OpenTofuはTerraformの機能を維持しつつ、オープンソースコミュニティの成長を促進するための選択肢として、企業のクラウドインフラ管理において重要な役割を果たしています。