Cassandraにおける垂直自動拡張技術の探求

はじめに

Cassandraは水平拡張に優れたNoSQLデータベースとして知られていますが、垂直拡張の可能性も注目されています。特にKubernetesなどのコンテナ環境では、単一ノードのリソース調整が可能であり、データ移動を迴避できるため、柔軟なリソース管理が求められます。本記事では、Cassandraにおける垂直自動拡張の技術的特徴、課題、および実踐的な設計手法を解説します。

垂直拡張と水平拡張の違い

Cassandraは水平拡張により、ノードを追加するだけでスケーラビリティを向上させます。ただし、水平拡張にはデータの再配分が伴い、時間と手間がかかるという課題があります。これに対し、垂直拡張は単一ノードのCPUコア數を調整することで、リソースを動的に変更できます。Kubernetes環境では、Podのリソース制限を変更するだけで即時調整が可能で、サービスの中斷を最小限に抑えることができます。

垂直拡張の技術的課題

リソース調整の影響

  • SQL Serverのテスト結果:CPUコア數を調整する際、アプリケーションに通知せずに変更するとパフォーマンスが低下しますが、リソースヒント(例:スレッド數の制限)を設定することで、トランザクション処理量が30%向上します。
  • Cassandraの特異性:JavaのavailableProcessorsは起動時にCPUコア數を読み込み、その後の調整は自動で反映されません。したがって、起動時に高コア數を指定し、段階的に削減する必要があります。

メモリ調整の困難

  • 無中斷でのメモリ調整は技術的に困難であり、PythonやJavaなどの言語ごとに実裝が異なります。現狀ではCPU調整に注力しており、メモリ調整は今後の研究課題です。

自動拡張アルゴリズムの設計

反応型と予測型の統合

  • 反応型:CPU使用率の変化傾斜を滑動窓で計算し、リソース調整の必要性を検出します。ユーザーがコスト効果やパフォーマンス優先度をカスタマイズ可能にします。
  • 予測型:過去24時間のCPU使用パターンを時間系列モデルで分析し、未來の負荷を予測します。拡張アルゴリズムとして挿抜可能なモジュール設計となっています。

パラメータ調整とバランス

  • リソース浪費(slack)とCPUブロッキング(throttling)のバランスを調整します。例えば:
    • バッファ量:コア數の予備スペースを調整。
    • 履歴データ長:予測精度に影響。
    • 反応と予測の比率:負荷特性に応じて重みを変更。

VASMシミュレータの応用

実際のテストには時間がかかるため、垂直自動拡張シミュレータVASMが開発されました。主な機能は以下の通りです:

シミュレーション環境

  • Kubernetesクラスターのリソース特性(コア數、ノード構成)を再現。
  • 預録されたCPU使用率トレース(trace)を再現し、リアルなワークロードを模倣。

予測とパラメータ最適化

  • 歴史データをもとに未來のCPU使用トレンドを予測。
  • パラメータ調整インターフェースを提供し、リソース浪費とブロッキング率のパレート曲線を可視化。

テスト効率の向上

  • 原則的なテストには37日かかりましたが、VASMにより短時間で複數のシナリオをシミュレート可能。アルゴリズムの検証と最適化を加速します。

実験結果と観察

SQL Serverのテスト

  • CPUコア數を調整する際、アプリケーションに通知しないとパフォーマンスが低下しますが、リソースヒントを設定することでトランザクション処理量が30%向上。
  • 96コア環境で8コアを割り當てても、ワークロードを処理できることが確認されました。

Cassandraのテスト

  • 6ノードクラスターのCPU使用率は日間ピークと夜間谷値の週期的変化を示し、垂直拡張により需要に合わせてリソースを調整可能。
  • JVMが初期設定のコア數を認識するため、起動時に高コア數を指定する必要があります。

アルゴリズムのパフォーマンス

  • 原則的なKubernetes自動拡張アルゴリズムは単回調整しか行えず、週期的負荷には対応できません。新しいアルゴリズム(Casper)は反応型と予測型を組み合わせることで、リソース利用率を向上。
  • 週末の低負荷時にリソースを事前に縮小し、浪費を防ぐことが可能です。

技術的課題と今後の方向

リソース動的調整の制限

  • 現在の技術ではメモリの無再起動調整が困難であり、アプリケーション內部のロジック変更が必要。
  • CPU調整に注力しているが、今後はメモリやI/Oの垂直拡張可能性も検討。

アルゴリズムの最適化

  • 時系列モデルの精度向上(例:ARIMA、LSTM)。
  • パラメータ自動調整機構の強化。

実環境での検証

  • VASMのシミュレーション結果を実際のクラスターで検証し、安定性とパフォーマンスを確認。

結論

Cassandraにおける垂直自動拡張は、水平拡張の課題を補う重要な技術です。VASMシミュレータを活用することで、アルゴリズムの検証と最適化が効率化され、実環境での適用が可能になります。今後の課題として、メモリやI/Oの調整技術、予測モデルの精度向上が求められます。