OpenTelemetry と OTTL Playground による効率的なトラブルシューティング

OpenTelemetry は、マイクロサービスアーキテクチャにおける観測性(observability)を実現するためのオープンソースプロジェクトであり、ログ、トレース、メトリクスの収集・処理を標準化しています。特に、OpenTelemetry Collector はデータの変換やフィルタリングに不可欠な役割を果たしており、その処理ロジックを定義するための OTTL(OpenTelemetry Transformation Language) が採用されています。本記事では、OTTL とその実験的ツールである OTTL Playground の特徴、利用方法、およびトラブルシューティングにおける実用性について解説します。

OTTL の概要

OTTL は OpenTelemetry Collector 內部で使用される、データ変換を目的とした領域特定言語(DSL)です。logs、traces、metrics などのデータをフィルタリングや構造化処理に適した形式に変換するための機能を提供します。內蔵の関數は約 100 個あり、條件文や論理演算子をサポートしており、柔軟なデータ操作が可能です。

シンタックス構造

  • 関數:データを操作するための基本単位(例:set_severity_numberparse_json)。
  • 條件:関數の実行を制御する論理式(例:if 文によるフィルタリング)。

例として、ログの severity_numbererror に設定する処理は、ログ內容に error が含まれる場合にのみ実行されるように條件付きで記述されます。

トラブルシューティングの課題

OTTL の処理ロジックを検証する際、従來は以下のような方法が用いられていました。

Debug Exporter

  • 出力結果をコンソールに直接出力し、入力データと出力データを比較。
  • 大量のデータや複雑な処理では分析が困難。

Debug Logs

  • OTTL 実行中のステップごとのデータ変化を出力。
  • 分ステップでの追跡が可能。
  • 他のコンポーネントのログと混在するため、情報が雑になる。

これらの方法では、処理の可視化や共有が難しいという課題がありました。

OTTL Playground の特徴

CNCF(Cloud Native Computing Foundation)が後押しする OpenTelemetry において、OTTL Playground は、処理ロジックのテストとデバッグを効率化するための Web 基盤の実験環境です。以下がその主な機能です。

ウェブベースのサンドボックス環境

  • OpenTelemetry Collector の起動や本番環境への影響なしに、ローカルで処理をテスト可能。
  • WebAssembly をサポートし、実行結果が本番環境と一致。

主な機能

  • 視覚化結果
    • 原始データ vs 転換後データの GIF コンパレータ。
    • JSON patch による差分表示。
    • 転換後の JSON データの直接表示。
  • 実行ログ:処理ステップごとの変化を明確に表示。
  • 共有機能:テストケースを URL で共有可能。

対応するプロセッサタイプ

  • Transform Processor:JSON ログのパースやフィールドの再構成。
  • Filter Processor:ログレベル(debuginfo)によるフィルタリング。

実際の利用例

ケース1:JSON ログのパース処理

  • 入力:bodytimestamp を含む JSON ログ。
  • 転換ステップ:
    1. body を獨立したフィールドにパース。
    2. timestamp を文字列から時間形式に変換。
    3. severity_texterror に設定。
    4. bodymessage に置き換え。
  • 出力:bodymessage に置き換えられ、severity_text が追加され、timestamp のフォーマットが更新される。

ケース2:フィルタリング処理

  • 入力:leveldebug または info の複數ログ。
  • 條件:leveldebug のログを除外。
  • 出力:debug ログが削除され、info ログのみ殘る。

今後の展望

  • ルーティングコネクタテールサンプリング のサポート拡充。
  • 視覚化結果の改善とデバッグフローの簡略化。
  • エンベッドビューの実裝(ドキュメントやブログへの統合)。
  • 開源プロジェクトとしてのコミュニティ貢獻を歓迎。

結論

OTTL Playground は、OpenTelemetry の処理ロジックを効率的にテスト・デバッグするための強力なツールです。特に、視覚化機能と共有機能により、チーム內での協業や知識共有が容易になります。今後は、より高度な機能の拡張と利用の容易さ向上が期待されます。OpenTelemetry は CNCF が推進する技術であり、観測性の実現に不可欠な基盤となるため、積極的な利用が推奨されます。