Infrastructure as CodeとPolicy as Codeによる開発者自主性の向上:TV4の実踐と課題

はじめに

クラウドネイティブ環境におけるインフラストラクチャ管理は、開発者自主性の向上と運用効率の最適化に直結します。TV4とMTV3という北歐最大のメディア企業は、AWS上に數百のマイクロサービスを展開する中で、OpenTofu(Terraform)を標準化したIaC(Infrastructure as Code)アプローチを採用しています。しかし、HCL言語の學習曲線や、複雑なモジュール管理、強型のAWSサービスとの整合性といった課題に直面していました。この記事では、CDK for Terraform(CDKTF)とPolicy as Code(OPA)を活用した実踐事例と、技術的な課題とその対応策を解説します。

IaCとPolicy as Codeの実踐

OpenTofuの現狀と課題

TV4はOpenTofuを唯一のクラウドリソース管理ツールとして採用し、300以上のプロジェクトと1,400のワークスペースを運用しています。18のチームがそれぞれ異なる分野(フロントエンド、データサイエンス、バックエンドなど)でインフラを管理していますが、以下の課題が生じていました。

  • HCL言語の學習曲線:80人のアクティブユーザーの多くがコンサルタントであり、宣言型構文に慣れていない。\n- モジュール管理の複雑さcountfor_eachなどのメタ引數による大規模モジュールの保守性低下。\n- AWS ECSの強型制限container_definitionsフィールドの型情報不足による配置ミス。\n- 検証タイミングの遅延:apply時に検証を行うため、開発者フィードバックループが遅延。\n- 共有定數と狀態管理の困難さ:共有モジュールと出力の依存関係管理。

CDK for Terraform(CDKTF)の導入と利點

CDKTFはTypeScriptを用いてOpenTofuを記述し、HCL/JSONにコンパイルするツールです。以下のような利點があります。

  • JavaScript風の構文:HCLの學習曲線を緩和し、JavaScript開発者にとって直感的な記述が可能。\n- 動的構成のサポート:JavaScript関數を用いて、コンパイル時にロジックを処理(例:遠端バックエンドの動的設定)。\n- モジュールのオブジェクト指向設計:JavaScriptパッケージでモジュールをラップし、継承やメソッド拡張を可能に。\n- 自動化されたワークスペース管理:CLIがスタック依存関係を分析し、正しい順序で実行。\n- 型安全の実現:カスタム型でECSタスク定義などの強型問題を解決。

実際の応用例

  • 自動化されたバックエンド設定:環境変數で遠端バックエンドを動的に設定。\n- 動的なAWSアカウントデプロイ:入力パラメータに基づき、複數のAWSアカウントにリソースを展開。\n- グローバルコストラベルの自動適用:ライブラリバージョン更新時にラベル戦略を自動適用。\n- 型チェックによるエラー検出:開発者がコンテナ定義のフィールドエラーを即座に検出。

Policy as Code(OPA)の統合

OPA(Open Policy Agent)を用いて、インフラストラクチャの構成を制御するポリシーを実裝しています。以下のような特徴があります。

  • 宣言型ポリシーの実裝:RIGO言語でネットワークポリシー、リソース制限などのルールを定義。\n- 動的検証の実現:Terraform/OpenTofuのプランフェーズでポリシーを検証し、配置ミスを事前に検出。\n- CDKTF型システムとの連攜:型チェックを強化し、ポリシーの実行精度を向上。

例:ECS Fargateのプラットフォームバージョンチェック

rego\npackage ecs\nviolation[{"message": \"Platform version must be latest\"}] {\n input.resources[_].type == \"aws_ecs_service\"\n input.resources[_].attributes.launch_type == \"FARGATE\"\n input.resources[_].attributes.platform_version != \"latest\"\n}\n このポリシーにより、Fargateのプラットフォームバージョンが最新でない場合、配置が拒否されます。

技術的課題とその対応

CDKTFの現狀と課題

  • 更新の停滯:CDKTFは2024年1月以降、重大な更新が行われていない。\n- CLIのTerraform依存:デフォルトでTerraformにバインディングされ、OpenTofuへのサポートにはカスタムソリューションが必要。\n- AWSプロバイダーのサイズ問題:TypeScriptバインディングが352MBに達し、多微サービスプロジェクトではディスク使用量が増加。\n- 長期的なサポートの不確実性:今後のサポートが不明確なため、技術選定の再評価が必要。

他の技術的考慮

  • 型安全とコンパイル時検証のバランス:動的構成と靜的構成の統合。\n- チーム間の標準化と柔軟性:共通のベストプラクティスを維持しながら、チームごとの柔軟性を確保。

結論

CDKTFとOPAの統合により、TV4は開発者によるインフラストラクチャ管理の自主性を高め、配置ミスの防止と運用効率の向上を実現しています。しかし、CDKTFの更新停滯やTypeScriptバインディングのサイズ問題など、技術的な課題も殘っています。今後の方向性として、OPAポリシーの數を増やし、Terraformのプルリクエストを活用したポリシーの共有、CDKTF CLIのOpenTofuへのサポート改善が求められます。開発者自身がツールを「dog food」し、継続的な改善を推進することが、長期的な成功の鍵となります。